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うたを わすれた カナリア
きれいな うたごえがひびく ちいさなもり。 そこは、いろとりどりの トリたちが うつくしい うたを かなでる もりでした。 そのなかでも、いちばんのトリは カナリア。 ちいさな からだから、こころに ふれるような こえをだすのでした。
あるひのこと。 カナリアは、もりのなかで いちばん おおきなきのところへ やってきました。 コンサートをするためです。 カナリアのうたを きくために、とおくのもりから やってくる どうぶつたちも、おおぜい いました。 どうぶつたちは、えさになる くだものや きのみを たくさんもってきます。 それを たべることによって、このもりの トリたちは くらしていけるのです。 つきが ぼんやりと うかぶころ。 カナリアが、きのてっぺんから まいおりてきました。 その うたの すばらしいこと。 げんきをくれる うたは、たいようのように あつく。 さみしさを わすれさせてくれる うたは、うみのような やさしさを。 きもちを さわやかに させてくれる うたは、はるのかぜを おもわせてくれました。 みんな、カナリアに おおきな はくしゅを おくりました。 そのときです。 きのえだに とまっていた カナリアが、あしをすべらせて、おっこちてしまったのです。 そこにあつまった みんなが、いっせいに カナリアのところに かけよります。 うずくまる カナリアは、すぐに フクロウのおいしゃのところへ はこばれていくのでした。
つぎのひ。 もりを つつみこむ うたは、どこか さみしそうでした。 カナリアのうたが きこえてこないのです。 きから おっこちた カナリア。 とくに おおきな けがは しませんでした。 けれど、たった ひとつ たいせつなものを うしなったのです。 それは、こえ でした。 こえを うしなってしまっては、あの きれいなうたも うたえるはずが ありません。 もりの トリたちは、みんな がっかりしました。 そして、いつしか だれも カナリアのことを くちにすることは なくなってしまいました。
それから どれくらい たったでしょうか。 まいにち うたが ひびいていた もりでしたが、いまでは ものおと ひとつしません。 みんな、カナリアのように おちぶれていくのを こわがりました。 うたを うたえなくなったら。 だれも、うたを きかなくなって しまったら。 そうなったら、どうやって いきていけばいいのでしょう。 だれも、くだものや きのみを もってきてはくれません。 それならば、じぶんたちで えさをとるようにしよう。 そうしているうちに、だれも うたを うたわなくなりました。 いつかは、カナリアのような すてきな うたを うたえるようになろう。 そんな だれもがみた ゆめも、どこかへ とんでいって しまったのです。 もう、このまま しずかなもりのままなのだろうか。 みんな、くらいかおをして そう おもいはじめた そのときです。 もりのどこからか、ちいさな こえが きこえてきました。 それは、けっして じょうずとは いえない うたごえ。 それでも、いっしょうけんめいに うたを うたっています。 もりじゅうの トリたちが、あの きのしたに あつまりました。 へたくそな うたを うたっていた トリ。 それは、カナリアでした。 もう、こえは でないだろう。 そういわれていた、カナリア。 それでも、ただ だいすきな うたを うたいたいという おもいが、きせきを おこしたのです。 そのすがたに、もりじゅうの トリたちは おたがいの かおをみあわせました。 そして、なにかが ふっきれたように、おおきなこえで うたいだすのでした。 「ゆめをみることを こわがらないで」 カナリアの おもいが とどいたのです。 かぜが ふきました。 やさしい、しずかな かぜが。 そのかぜにのって、うたごえは せかいじゅうに とどきました。 このもりに、きれいな うたごえが もどることは、そう とおくないようでした。
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かがやく とりに なるために
ちいさなもりの ちいさな みずうみに、いちわの アヒルが くらしていました。 アヒルは、うまれてから ずっと このみずうみで くらしていたので、ほかのせかいのことを しりません。 ただ、まいにち のんびりと みずうみを およいでいるのでした。
あるひのこと。 いつものように、アヒルが みずうみを およいでいると、とおくのそらに なにかが みえました。 それは、ハクチョウのむれ。 まっしろな はねをひろげて、ゆうがに そらをとんでいきます。 アヒルが、ぼんやりと そのすがたを ながめていると、とつぜん みなもが ゆれました。 おどろいた アヒルが ふりかえると、そこには ちいさなハクチョウが おぼれているでは ありませんか。 アヒルが、ハクチョウをたすけると ハクチュウは なんども おれいをいいました。 アヒルとハクチョウは、すぐに うちとけて ともだちになるのでした。
それから、すうじつが たちました。 アヒルとハクチョウは、ひびを のんびりとくらしました。 いっしょに えさをたべたり、よぞらのほしを かぞえたり。 それは それは、たのしいじかんが すぎていったのです。 そんな あるよるのこと。 ハクチョウは、とおくのそらを みあげていいました。 そろそろ、おわかれだよ、と。 アヒルは、どうして ハクチョウが そんなことをいうのか まったくわかりません。 いつまでも、いっしょにいられると おもっていました。 いつまでも、たのしいじかんは つづくとおもっていたのです。 しかし、ハクチョウには ゆめがありました。 だれからも そんけいされる、きれいなハクチョウになること。 そのためには、あの ハクチョウのむれに おいつかなくては なりません。 このまま、みずうみに いるわけには いかないのでした。 アヒルは、ハクチョウの すがたを まじまじと みつめてみました。 そこには、いままで きづかなかった、きれいな トリのすがたが うつります。 じぶんとは、ちがう。 ハクチョウなのだから、ゆめをみても おかしくない。 アヒルは、しずかに ハクチョウから とおざかりました。 おわかれのじかんです。 ハクチョウの さよならに、アヒルは こたえませんでした。 ハクチョウのすがたを みたくない。 アヒルは、そう おもい、かおを みずうみのなかに しずめました。 そのときです。 アヒルのめに、ハクチョウの みずかきが みえました。 あんなに ゆうがに およいでいるように みえたハクチョウでしたが、じつは ひっしに およいでいたのです。 アヒルである じぶんよりも、はるかに みにくい みずかきのうごきです。 その みずかきが、ふっと みえなくなりました。 アヒルが みずうみから かおをあげると、ハクチョウのかげが つきにむかって とんでいくのが みえました。 「ありがとう!ずっと、ともだちだよ!」 アヒルのこえに、ハクチョウは おどろいたように ふりかえります。 よるのそらに、たくさんの さよならと ありがとうが あふれだすのでした。
つぎのひ。 アヒルは、うまれて はじめて、もりのそとにでることに しました。 じぶんも、ハクチョウのように ゆめをもっていきることに きめたのです。 それは、けわしいみちのりかも しれません。 ゆめなんて、みつからないかも しれません。 それでも、みずうみにいるより ずっと マシです。 だれもいなくなった みずうみに、しずけさが もどります。 アヒルのぼうけんは、まだ はじまった ばかりなのでした。
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なくした しゃしん
ゆきのふる ちいさなまちの おはなし。 そのまちに、ひとりの おじいさんが くらしていました。 おじいさんは、ゆうめいな しゃしんか。 いまは、うまれた このまちで、ネコと くらしているのでした。
あるひのこと。 おじいさんは、ネコといっしょに まちを さんぽしていました。 ふと みあげると、そこには ゆきまつりの かみが はられていました。 まわりをみわたすと、たしかに みんな いそがしそうです。 それをみて、おじいさんは おもいだしました。 きょねんの いまごろ、ネコに であったことを。 わかいころは、せかいじゅうを たびしては、しゃしんをとっていた おじいさん。 としおいてからというもの、しゃしんも とらずに、おさけばかり のんでくらしていました。 このまちには、とりたいと おもう しゃしんが なかったのです。 よっぱらった おじいさんが、ろじうらに すわりこむと、そこに ふるえている ネコのすがたが ありました。 おじいさんは、てにもった パンを ちぎって、ネコに あたえました。 それから、ネコと おじいさんの くらしが はじまったのです。 だれかのこえが きこえて、おじいさんは われにかえりました。 みると、わかい しゃしんかが、みちゆくひとの しゃしんをとっています。 おじいさんは、その しゃしんかに おねがいして、いちまい しゃしんを とってもらうことにしました。 ネコと おじいさんが ならんだ、すてきな きねんしゃしんです。 おじいさんは、しゃしんかに おれいをいうと、かえりみちを たどります。 いつのまにか、ひがくれていました。 そらをみあげていた おじいさん。 まえから きたひとに ぶつかってしまいました。 あぶない あぶないと おもい、おじいさんは しっかりと まえをむいて、いえに かえるのでした。
そのひの よるのこと。 おじいさんは、ひっしで なにかを さがしています。 それは、ひるま まちでとった あの しゃしんでした。 どうやら、ひとに ぶつかったときに おとしてしまったようです。 がっかりした おじいさんでしたが、ネコが えさをねだると、えがおで ゆうしょくの したくをはじめるのでした。 それから、いちねんが たちました。 しずかな いえのなかに、かなしいおとが ひびいています。 ネコが てんごくに いってしまったのです。 あんなに げんきだった ネコ。 それでも、かみさまがくれた じかんには かぎりがあったのです。 おじいさんは、いちにちじゅう なきあかしました。 かなしくて、かなしくて。 なにもするきが おきません。 そして、かなしさを わすれるために、むかしのように おさけをのむように なってしまうのでした。 まいにち まいにち、よっぱらう おじいさん。 まちにでては、おさけを かって、みちばたで すわりこむ ひびが つづきました。 こうしていれば ネコに あえる。 そんな きがしたのでしょうか。 しかし、ネコが おじいさんのまえに あらわれることは ありませんでした。 さむいよる。 つめたい かぜ。 きれいな つき。 くるしい こころ。 おじいさんは、おもいました。 もう、いきていても しかたないじゃないか。 このまま、めをとじてしまえば ネコにあえるかもしれない。 じぶんも、てんごくへ いこう。 そう かんがえ、めをとじた そのときです。 まちに、つよいかぜが ふきました。 その かぜにのって、おじいさんのところに なにかが とんできました。 おじいさんが ゆっくりと めをあけると、そこには あのひ なくしたはずの しゃしんが しわしわになって おちていました。 しゃしんのなかの ネコが、おじいさんに ほほえみかけているようでした。 おじいさんは、しゃしんをひろうと おもいきり、だきしめました。 「まだ できることがあるじゃないか」 ゆっくりと たちあがる おじいさん。 じめんにころがる、おさけのビン。 ふらふらに なりながらも、おじいさんは ある おみせのドアを あけました。 そこは カメラやさん。 カメラをてにした おじいさんのすがたを、ネコが くものうえから みまもっているのでした。
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あおい ほし
ちいさな みなとまちの ものがたり。 そのまちに、あいしあう ふたりが くらしていました。 おとこは、りょうしをしており、おんなは まいにち おとこの ぶじをいのっては、あたたかい スープをつくって まっているのでした。
あるひのこと。 そのひは あさから あめがふっていました。 ふねは だいじょうぶだろうか。 あらしに あっては いないだろうか。 おんなは しんぱいそうな かおをして、まどのそとと とけいのはりを、こうごに みつめていました。 しかし、どんなに まっても おとこは かえってきません。 ふあんで いてもたっても いられなくなった おんなは、かさをてに あめのまちへと かけていきます。 みなとに つくころには、あめは つよまり かさも やくにたたなく なっていました。 ともだちの りょうしに はなしをきいても、おとこの ゆくえは わかりません。 ふねも、どうやら みなとには ついていないようでした。 おんなは、ともだちが とめるのも きかずに そとで ふねが くるのを まちつづけました。 どうか、ぶじに かえってきますように、と おんなは いのりました。 やがて、からだの よわいおんなは あめのなかに くずれおちるのでした。
つぎのひ。 おんなは、じぶんのいえで めをさましました。 かぜをひいて しまったのか、からだが おもうように うごかず、おきあがることも できません。 それでも、しせんだけで おとこのすがたを さがします。 すると、げんかんの ドアがあいて ともだちの りょうしが はいってきました。 おんなは、ふねのことを たずねます。 りょうしは、くらいかおをして ふねが あらしにあったことを つたえました。 おとこも、おなじふねにのった りょうしたちも ゆくえふめいになっていたのです。 おんなは がっくりと かたをおとしましたが、ゆっくりと たちあがると、だいどころへと むかいました。 りょうしが おんなを とめましたが、おんなは れいぞうこから やさいを とりだします。 おとこのために スープをつくろうと いうのです。 いえのなかに トントンという ここちよい おとがひびきます。 やがて、おいしそうな スープが できあがりました。 おんなは、それを おさらによそり、テーブルのうえに 3つ ならべました。 おとこと おんなと、ともだちの ぶんです。 そして、しんしつにあった あおいはなを テーブルのうえの かびんに さしました。 それは、おとこが おんなの たんじょうびにくれた きれいな はな。 おんなの たからものでした。 おんなは、まどから つきに てをあわせ、おとこの ぶじをいのりました。 ゆっくりと たおれる おんなのからだを、りょうしが くちびるを かみながら、だきとめるのでした。
そのひの よるのこと。 とおくの そらのしたに、あかりが みえました。 おとこの のったふねが、みなとに もどってきたのです。 あらしには あったものの、みな ぶじに かえってくることができました。 おとこは、いそいで おんなのまつ いえにむかいます。 げんかんの ドアをあけて、おおきなこえで おんなのなまえを よびました。 そのときです。 しんしつから りょうしが でてきました。 てには、かれた はなを もっています。 それをみた おとこは、すぐに しんしつへと かけていきました。 そこにいたのは、しずかに よこたわる おんなの すがたでした。 いえのなかに、おとこのこえが ひびきます。 なんども、なんども おんなの なまえをよびました。 それでも、おんなは へんじをしては くれません。 りょうしが、おとこのかたに てをおきました。 そして、かれてしまった あの あおいはなを てわたします。 おとこは、それを うけとると、なにかを おもいだしました。 それは、あらしのなか ただひとつ かがやいていた、あおい ほし。 この はなと おなじように、きれいな はなでした。 ふねは、その ほしのひかりに みちびかれて、みなとに かえってこられたのです。 「なかないで。ほら、スープが さめちゃうわ」 おんなのこえが きこえました。 それは、とおくの そらから きこえてくるようでした。 おとこは、まどをあけて よるのそらを みあげました。 あの あおいほしは、もう どこにも みえませんでした。 おとこは、しずかに まどをしめると、おんなに おれいをいいました。 たすけてくれて、ありがとう と。 ほしが きれいに かがやいています。 あした はれたら、あの はなを かいにいこう。 おとこは、しずかに イスにすわると、ゆっくりと めをとじるのでした。
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イコ
あめのふる ちいさなまちに、めずらしい どうぶつが くらしていました。 それは、イヌとネコを たしたような ふしぎな どうぶつ。 イヌたすネコで、イコとよばれていました。 イコは いつも ひとりぼっち。 さむいよるを ひたひたと、じめんを みつめがら あるいているのでした。
あるひのこと。 イコが みちばたの ゴミばこで えさをさがしていると、いっぴきの ネコが やってきました。 そのネコも ノラネコです。 イコは ぎこちない えがおで、ネコに えさを ほうりました。 ネコの めのまえに おちた イコのえさ。 ネコは、それを むしするように、ほかの ゴミばこに あたまを いれました。 イコの こころに、またひとつ きずが うまれました。
つぎのひのこと。 きょうも そらは あめふりです。 イコが とぼとぼと みちをあるいていると、いっぴきのイヌが とおりのむこうから あるいてきました。 みると、あしを ケガしているようです。 イコは、ゆっくりと イヌに ちかづくと、しずかに きずぐちを なめてあげました。 イヌは、イコの やさしさに ちいさなこえで なきました。 しかし、イコのすがたを まじまじと みると、きゅうに こわくなったのか、あしを ひきずりながら にげていってしまいました。 あめが すこし、つよくかんじました。
そのひのよるのこと。 イコは、まちはずれの のはらで、ほしひとつない そらを みあげていました。 じぶんは いったい だれなんだろう。 イヌでもない。 ネコでもない。 じぶんいがいに、じぶんと おなじすがたの どうぶつもいない。 じぶんは いったい だれなんだろう。 ちいさな ちいさな からだを、あめが やりのように つきさしました。 イコの からだがふるえていたのは、かなしさだけでは ありません。 いつのまにか、かぜを ひいてしまったのでした。 とおくに ともる、まちの あかり。 そこに、イコの いばしょは ありません。 このまま、めをとじて てんごくに いってしまおうか。 そうすれば、かみさまが ぼくと おなじ だれかさんを つくってくれるかもしれない。 そう かんがえた イコ。 ゆっくりと からだを よこたえると、しずかに ひとみを とじました。 そのときです。 クシュン、と イコは くしゃみをしました。 せなかを ふるえが かけぬけていきます。 それに きがついた イコは、きゅうに めをあけました。 そして くちをあけると、おもいっきり いきをすいこむのでした。 イコは きがついたのです。 じぶんが いままで、こきゅうを していたことに。 そして、さむけが おしえてくれたのです。 じぶんが いきていたことを。 「ああ、ぼくは ぼくでしかないんだ」 イコは ゆっくりと たちあがりました。 もう、じぶんが だれかなんて まよいません。 イヌじゃなくても、ネコじゃなくても、そんなこと どっちでもいいのです。 きがつくと あめが あがっていました。 ぼんやりと、つきが よるのあいさつを してくれます。 イコは、まんてんに かがやく ほしたちに ちかいました。 かぜが なおったら、なかまをさがしに でかけることを。 ながれぼしが ひとつ、こを えがきました。
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